秘密 THE TOP SECRET

新装版 秘密 THE TOP SECRET 2 (花とゆめCOMICS)

新装版 秘密 THE TOP SECRET 2 (花とゆめCOMICS)

原作を読んで下さい。
見てから時間が経てば、ちょっとは怒りに似た感情も収まるかな、と思いましたがそうでもなかった。原作のファン、というか清水玲子先生のファンなんですけど、その中でも「秘密」は抜群に面白いシリーズの1つだと思っています。設定も、ハリウッドが買い付けにきてもいいくらいだと思ってるんですが、なぜこんな残念な作品になってしまったんだろう。死者の脳から、遡って数年分の記憶映像をモニターできるようになった近未来。第九と呼ばれる組織は、通常捜査では困難な事件の捜査をこのMRI技術を用いて解決する部署として創設されました。画期的な技術ではありましたが、人道的な面で被害者・加害者家族を中心に世間から非難を浴びる描写も多々あります。死者が死してもなお守りたかった秘密を暴いていく墓荒し的な行為、また、難事件の解決のために生存している被疑者の死を願ってしまう描写などで表現される苦悩。それでもなお、事件解決のために数々の苦悩を振り切り捜査にあたるメンバー。そしてそれぞれの事件で明らかになる「秘密」。サスペンスミステリとしてもヒューマンドラマとしても大変おもしろいので、気になったかたはぜひ原作を読んでみてください。というか映画を見に行こうと思っている人は、その1800円で原作を3巻まで買って下さい。
あともう一点。この作品、元がちょっと耽美的といいますか。清水先生の美しい絵柄がそうさせることもさもありなんなのですが、多分にブロマンス的な要素を含んでいます。(ブロマンスって書いたけど、私は普通に愛情だと思ってます)だから実写映画化が発表されたとき「原作に漂う男同士のアレな描写をざっくり落として、オリジナルの女キャラを投入した挙句甘ったるい恋愛要素を入れでもしたらネガキャンしまくってやる」と息を巻いていたのですが、公開が近づくにつれ段々冷静となり、「そもそも原作のキャラクターを3次元で完全再現なんてムリだし、アレな描写がなくても、少しでも匂いが残っていればいいや。『秘密』という作品の面白さは、私にとってはBL要素もありだけど、そもそも設定と物語そのものにある。そこをきちんと描いてくれたらみんなにすすめよう」という神仏のような心境までに至りました。そして公開翌日。地元で一番早い回に、早起きして出向いた私が見たのは、アレな雰囲気は残してくれたけど、肝心要のストーリーをぐちゃぐちゃ掻き回して謎のイメージ映像でふんわり締めた、カタルシスも何もない映像でした。
秘密って、別に難しい話じゃないんですよ。苦い終わり方はあっても、事件としては犯人の動機やアリバイなどはすっきりと終わるんです。それなのに、絹子と貝沼に無理やり接点を持たせた挙句、絹子は一体何をしたかったんだ?って感じで、動機もよくわからんまま終わるのですが…そもそも絹子はサイコパス設定じゃないし……。「プラチナデータ」もそうですけど、女優さんじゃなくてモデルを起用するのが好きなんでしょうか? プラチナデータの方はセリフがないイメージ映像のような使われ方だったんで気にならなかったんですが、今回は演技のうわっ滑りも気になりました……。
と、ごちゃごちゃ書きましたけど、結論は冒頭のとおり「原作を見て下さい」「私はこの作品が気に入りませんでした」ってことです。原作ファンだからここまでイライラしてますけど、別に原作ファンじゃなくても多分「見なくていいです」って言ってたと思います。松坂桃李くんのメガネ&スーツは最高でした。ごちそうさまです。