屍者の帝国

原作未読。今まで友人に伊藤計劃氏の本を何度か勧められたのですが、最近はめっきり本を読むことがなくなってしまい、そのうち読もうかな…と思いながらアニメ化まで結局手に取ることはありませんでした。ということで設定とかも何も知らない状態(声優さんとスタジオをチェックしたくらい)で劇場へ。開始1分で「あ、これ私が好きなタイプ(つまり)」と思ったのですが、結局最後までそうでした。思っていよりはずっとエンターテイメントしていて、ロードムービー的な要素もあればアクションシーンもあり、敵対する人物の野心は王道で。ただ、元ネタというか、世界観の基礎となる「フランケンシュタイン」の話を全く知らないので、そういう下地があったほうが楽しめたな、と思いました。もちろん有名な作品なのでおおまかなことは知っているのですが、花嫁の下りとかピンとこない(突飛に感じる)人もいるんじゃないかなあ、と。以下、ネタバレのためたたみます。あと妄想多め。

  • 入場特典でしおりを貰ったんですが、そのイラストを見てフライデーは女の子だと思っていた。始まって男だったので心のなかでガッツポーズしました。
  • フライデー(村瀬くん)は前半ほぼセリフがなく「いつしゃべるんだろうか…」と心配してしまったのだけど、中盤からたくさん叫んでて大変だな…と思いながら見ていた。
  • 屍者と生者の描き分け(動き)がすごいなあって思った。
  • カラマーゾフとニコライの関係もエッチだった。
  • まさか舞台の1つに日本が出てくるとは思わなかった。外国から描く日本って感じだった。
  • ハダリーは腐女子が考えた「素敵な女性キャラ」って感じで、まったく主人公(ワトソン)とフライデーの仲に干渉しないあたり最高だった。最後はキスくらいしても良かったのよ……。最後に「好きだった」って、ワトソンが過去形で言うところがキュンとした。
  • しかしワトソン、ハダリーのことを気にしている風ではあったけど、結局はずっとフライデーの事考えてるし、親友であるフライデーの墓を暴いて屍者化してまでも欲したものって、大義名分的には「フライデーの理論を実証する(魂の21g)」だけど、本当のところはもう一度フライデーに会いたいだけだったし……。
  • ハダリーの家に向かう地下通路でのワトソンとフライデーのシーンはとってもホモでしたね。ありがとうございます。
  • Mとザ・ワン。どっちも敵役の思想としてはありふれたものだったんだけど、愚かな人間から争う思考を奪ってしまえ〜なMより、花嫁さんに会いたかったザ・ワンの方が可愛いし、こういう敵役好きなんだよな。(ガン×ソードの鉤爪の男とか、スタドラのヘッドとか)でもザ・ワンは美少年・フライデーの器を乗っ取ろうとしたとこはずっこいと思いました。
  • バーナビーはとってもよい相棒だった。後で書くけどエンドロール後の小話は要らなかったかな、と思うけど、バーナビーとハダリーの穏やかそうな姿を見られたことだけは良かったかもしれない。
  • 結局「ヴィクターの手記」に書かれていたのは何だったんだろうな? 私の理解力が足りず、それを見たものの末路は理解したけど、手記そのものはよくわからなかった。
  • 最後はとても驚いたけど、最高にホモだったし最高に美しい終わりだった。なぜだろう?と思ったけど、エンドロールに挿入された独白でなんとなくわかった気もする。
  • フライデーに宿った「魂」は、あくまでも屍者として生まれたあとのものであって、ワトソンが求めた友人とはまた異なる存在だったのだろう。(屍者フライデーの魂が定着するまでは、混濁とする中に「親友フライデー」のかけらもあったのかもしれない)だから彼は、彼と同じ地平に行くために、自身を屍者化して魂を上書きしたのかな。と。
  • 魂の上書きまで想像に至るのはエンドロール後の小話があったからなんだけど、でもやっぱり屍者フライデーの独白で終わったほうがホモとしてはとても綺麗だったのにな、と思った。新しい相棒か…フライデーは?と落胆していたけど、これを書きながら「旧相棒」はフライデーじゃなくてバーナビーのことかも、と思い至ってちょっと浮上した。
  • もし人に「面白かった?」と聞かれたら「とてもホモだった」と答えるであろうし、「じゃあホモを抜いたら?」と聞かれたら「それは出汁を取ってない味噌汁の味を聞くようなものだぞ?」と返します。