四畳半神話大系

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい! さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。(背表紙あらすじより)

主人公の「私」は理系男子ですけど、ストーリーとしては妄想型文系男子小説です。いわゆる並行世界(パラレルワールド)の話で、4つの章から成り立ちますが、登場人物はほぼ一緒。メインとなるのは主人公の「私」、私の悪友の「小津」、なぜか小津が師として仰ぐ私の下宿の2階の住人「樋口師匠」、私があこがれる黒髪の乙女「明石さん」。大きなる分岐点は、入学したての主人公がどのサークルに入部するかで決まります。映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、そして秘密機関<福猫飯店>。1つの選択をした「私」は、もしこのサークルを選ばなければ、バラ色のキャンパスライフが…と後悔する羽目になるのですが、実は始点と終点はほとんど一緒です。また、話の中にもたびたび同じ文章や小道具、エピソードが用いられており、最終章の「八十日間四畳半一周」ではそれまでの章にリンクするという構成になっていて面白いと思いました。3章までなら、今っぽい面白い話だな、と思うだけで終わったんですが、最終章でグッと締まる展開でよかったと思います。ほかの章に比べてちょっとだけ前向きなのも良いですね。
でも腐女子的には小津×私で萌えてもいいですよね? 小津、私のこと愛しすぎ。最終章とか超人過ぎ。

小津は例の妖怪めいた笑みを浮かべて、へらへらと笑った。
「僕なりの愛ですわい」
「そんな汚いもん、いらんわい」
私は答えた。
(第一話「四畳半恋ノ邪魔者」P96

「慰めるわけじゃないけど、あなたはどんな道を選んでも僕に会っていたと思う。直感的に分かります。いずれにしても、僕は全力を尽くしてあなたを駄目にする。運命に抗ってもしょうがないですよ」
(最終話「八十日間四畳半一周」P343)