夜の神話

夜の神話 (講談社文庫)

夜の神話 (講談社文庫)

前回の「ぼくの・稲荷山戦記」に引き続き、読んでみました。今回も前回と同じく、ファンタジーで味付けてありますがテーマは「原発反対」です。都会から田舎に引っ越してきた正道(まさみち)は、ふとしたきっかけから動物や植物の声がわかるようになり、それと同じ時期に原子力発電所で働くお父さんの同僚「スイッチョ」さんが正道の家にやってきて…というあらすじ。前回と同じく、日本の神様がいろいろ出てきたりするんですが、今回は稲荷山戦記に比べると、キャラクターの数はさほど変わらないものの、なんだかまとまりがなく、「あれ、こんなところで終わっちゃったのか」というのが正直な感想でした。
思うに主人公の内面があまり深く描かれてなかったのかなぁというのと、重要な登場人物の1人、ツクヨミ様のキャラクターが立ってなかったのが要因かと思います。ツクヨミ様は神秘的なのかただのツンデレなのかよくわからなかったからなぁ。一番いいキャラだったのは「スイッチョ」さんかも。面白い題材なのに、核心に迫るまでが長く、その割りに山場はあっさり終わっちゃったりしてもったいないなぁと思います。もちろんそれなりに面白いと思うんですが、どうしても稲荷山と比べてしまうからなぁ。原子力発電所の描写も結構細かくて、ちゃんと取材して書いたんだなぁと思えるし。ただ主張がはっきりしてるので、やっぱり素直に受け止められない人もいるんじゃないかと思います。
既刊もこの調子だと文庫化されそうなので、また文庫で出たら読んでみようと思います。あと、前作の解説がなぜか中島梓だったので(しかも師匠…)これはーと思って検索かけたら、別名義があっさりわかってしまい、どっちかっていうと別名義のほうがこちらの世界では有名でした、先生!