宗像教授伝奇考 全6巻

それにしても宗像教授はかっこいいなぁ…。うちの大学にこんな教授がいたらさっそく転部したんですが。この作品を手に取るであろう方々の年齢層を考えればそんなに危惧することじゃないんですが、もし中学生あたりでこの作品に出会っちゃったとしたら、かなりの確立で「俺は将来民俗学者になるぜえええ!」と誓うに違いありません。そんでもってこの突飛な学説を信じちゃうことになるのかも…。ちがうのよ、かなりこの話は記紀とかについて詳しく書いてあるけど、書いてあること全部が学術的に正しいのじゃないのよ?! と、そんな少年少女に向かって説く羽目になったり。けれんみの強い作品ではありますが、話半分くらいに読むとためになります。
物語の前半部くらいは正しいこと言ってるわけだし…。巨人が出たり人狼だったりそういう話は好みじゃなかったんですが、神話、伝説、昔話と民族の移動を絡ませた展開は大変面白かったです。昔から「どうしてどこの地域でも宗教が生まれたんだろう」と思ってたんですが、そうか、人の移動がいろんな形で神様を産んだのか。

やっぱり民俗学は面白いです。中でも好みだった話は「白き翼 鉄の星」「魔将軍」「西遊将門伝」「桃太郎連説」あたり。それにしても民族学系のはなしってのは妙に生々しくって、夜に読むとかなり怖い。ふつうのホラーマンガとはまた違ったベクトルの怖さがあります。だから「百鬼夜行抄」(朝日ソノラマ/今市子)も怖いんだよね…。ホラーは「自分とは完全に違うもの」がもたらす恐怖だけど、こういう話は「自分と同じもの」がもたらす恐怖だからなぁ。

ちなみに「特別版」も読みました。諸星大二郎先生の作品は少ししか読んだ事なかったんですが、「暗黒神話」は面白そうだなぁ。それにしても天皇の話とか絡めた作品が多くて大丈夫だったんだろうか。マンガとはちがうけど「空色勾玉」(荻原規子)レベルでも、当初は駄目って言われてたのに…。(でも前に教授に聞いてみたところ、 私が想像するほど、天皇についての学術的タブーはないそうだ。 教授の言うことを鵜呑みにするなら、ですが)

今なら文庫版も出ていて手に取りやすいと思うので、興味のある人は是非。