ブリザードアクセル 1巻
- 作者: 鈴木央
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/07/15
- メディア: コミック
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少女漫画ではフィギュアとかバレエとか、表現がテーマの作品って結構あるけど、少年漫画ではあんまり見かけないテーマです。というか今ぱっと、フィギュアスケートをテーマにした少年マンガが思い浮かばなかった。他になんかあったかなー。*1 そういえば演劇系も少女マンガでは昔からジャンルの一つとして定着していたけど、少年マンガではありませんね。これって少女マンガと少年マンガの組み立て方の違いなんだと思います。マンガはマンガでも、細かく分けると別物だから、普段少年マンガはたくさん読む人でも少女マンガは読まなかったり、その逆だったり。マンガは「読み方に慣れる」という作業が必要だから、同じマンガだと思って少年マンガを読む要領で少女マンガを読んでしまうとモノローグの多さとか、特徴的なコマ運びとかで違和感を感じてよく理解できないんでしょう。実は少年マンガのふりした少女マンガが増えてきたから、この差はどんどんなくなっていくと考えているんだけど、またそれは別の話。
それでそんな「少女マンガ」的なテーマで挑んだこの作品。主人公の吹雪は優秀な兄たちをもって、両親の愛情に飢えてきた中学一年生。「目立つ」ために髪の毛を染めてみたり、ケンカ100連勝をしてみたものの、なぜか誰も寄ってきてくれない…そんなある日出合ったのが、フィギュアスケート。素人ながら4回転半(クワドラブルアクセル)を決めてみせ、観客の視線を一気に集めたことからフィギュアに目覚め、というのが1巻の大体の内容。
「4回転(クワドラブル)」とは、少女マンガでは「主人公が最終的につかむキメ技」として使われてきたものです。現在はどうか知りませんが、私が『THE チェリー・プロジェクト』なんかを読んだ当時は、4回転を跳べるのは世界でも指折りの男子選手だけで、肉体的に劣る女子選手が4回転を跳ぶというのは、まさしく世界を制するといっても過言じゃないことだったんです。しかし逆を言えば、男子では現実に4回転を跳べる選手が現実にいるため、この作品ではさらに「半(アクセル)」を加えています。最近フィギュア見て無いんだけど、4回転半を跳べる選手はまだいないんじゃなかろうか。
フィギュアがなぜ少女マンガ的テーマかというと、さっきも書いたように「表現」するスポーツだから。スポーツではあるけど、芸術的要素が大きいわけです。野球やサッカーのように、目に見えて点数が決まるスポーツではない。だから少年マンガ的カタルシスを得ることが難しい。それを払拭するために、少女マンガだって目に見えて分かりやすい「ジャンプの回数」という切り札を主人公に持たせるわけですが。あとは全寮制のスケートクラブを出して、多分そこでライバルとかバンバンだして少年マンガに必要なバトル要素を補充すると思うんですが、まだ1巻ではそこまではいきません。あと、フィギュアは芸術的スポーツなんで、今後主人公には「表現」の壁が立ちはだかると予想しておきます。*2
そういえば少年マンガでも表現系スポーツである「体操」がテーマだった『ガンバ!Fly high』があったのを思い出しました。同じサンデーで、アニメ化するくらい支持されたので、このブリザードアクセルも大丈夫かな。個人的にフィギュアもの、演劇ものなど表現系のマンガは大好物なので長く続いて欲しいです。